「見た目は子供、頭脳は大人。その名は名探偵コナン」のキメ台詞を生み出したアニメ村王！

讀賣テレビ放送株式会社東京支社

諏訪道彦氏

2012/7/25　10：00

◆業種

テレビ番組制作

◆子供のころになりたかったものは？

環境庁長官

自然を保護したいと思った。

大学の環境工学科で都市再開発と公園計画を学んだ。

公園を造るにしても、「自然を破壊しないような判断が出来る。」そういう立場に就きたかった。

自然のままにしておいた方が良い場合もあるのだ。

◆毎日欠かさずしていることはありますか？

１、うがい

健康のため徹底している。

飲食する前には必ずうがいをする。

これは、どこにいても徹底していて、うがいが出来ない環境のときは何も飲まないし食べない。

人の事務所に伺った時、折角お茶を出して頂いても飲めないので申し訳ないと思う。

２、腹筋

最近おなか回りが気になるので続けている。あまり目に見えて効果は見えないが。

◆自分の支えになった、或いは変えた人物・本は？

１、手塚治虫氏

物凄く偉大な神様。

ジャングル大帝、ブラックジャック等、多くの作品に影響を受けた。

中でも「ブラックジャック」は、企画言い出しからテレビ放送まで１３年もかかった作品だ。

企画してから、人脈をたどり交渉ができる関係になるまで、パーティなどでまず挨拶から始めた。

人間関係をつくるには、やはりお互いに会話が楽しい相手になるのが一番だと思う。

ＢＪは２００３年の時、生誕３０周年を記念してやっとテレビスペシャルアニメにすることが出来た。

１９８５年放送の11ＰＭに、自分がＡＤの回にゲストで来て頂いたのにも勝手に強い縁を感じたものだ。

２、ＴＶドラマ「俺たちの旅」

同居する三人の男性が、一緒に会社を立ち上げ生活していく友情の物語。

当時、自分は高校生だったが、大学生になった時は、仲間に囲まれた下宿生活でドラマに近い状態を目指した。

ドラマの世界観に対して、今でも大きく憧れがある。

とても影響を受けた作品だ。

３、海外ドラマ「刑事コロンボ」

当時、ＮＨＫで放送されていた大人気のミステリー番組。

元来ミステリー好きの私が物凄く衝撃を受けた作品で、単行本も全巻読んだ。

毎回、最初に犯人がわかるミステリーなのに、「この面白さはなんだ！」と驚いたものだ。

見事なシナリオ展開に「あーっ、そうか！！」と手をたたき、なぞが晴れる面白さがある。

私がプロデューサーを務める「名探偵コナン」は、オリジナルストーリーが３、４割あるが、ストーリー作りに大いに影響を受けている。

オリジナルストーリーは原作者青山先生への挑戦、みたいな気持ちで取り組んでいる。

ＴＶでの３０分間を、存分に楽しんでもらうため皆で知恵を搾り出す。

オープニングの「見た目は子供、頭脳は大人。その名は名探偵コナン」というセリフは私が考えたものだ。

オープニング曲のイントロは、このセリフを言うためにどんな曲も必ず１５秒にしてもらっている。

また最後、来週の予告の後に「ネクストコナンズヒント」や、コマーシャルに移行するときに扉が開く画像などのフォーマットは細部に工夫を凝らした。

映画では「コナンシネマクイズ」という通称だじゃれクイズや、エンディングの実写映像などオリジナル的なものも作品の中に織り込み、最後の最後まで見てもらえる努力をしている。

映画はＥＤ曲が始まったらもう終わりなので席を立つ、という流れには真っ向から立ち向かいたい。

ＴＶも映画もしっぽまでアンコなおいしいたい焼き、を目指したい。

テレビ番組の本編は、実質２０分できちんと見せるため、「定番推理定食」とでもいうような良質なトリック、推理、キャラクター設定などをお盆にのせて味わってもらうようにしている。

４、父

父は小学校の先生で、中学なら体育の担当だった。

近所の公園での夏休みのラジオ体操で、手本を見せる先生が父だった。

照れくさいような何とも言えない気持ちで父を見て体操していた。

背中を見て「自分は、父親のような大人になれるかな」と思ったことを覚えている。

◆自分の人生を変えたきっかけになった言葉は？

「前向きに考える」

何事も悪いようにとらないで、良いように考える。

中学校２年生の夏休み前、急性腎炎になった。

急性腎炎というのは、小さい子供の方が治る確率が高いようだ。

慢性になってしまえば人工透析が必要になる場合がある。

１４歳という微妙な年齢だったので、医師からは慢性になる覚悟も必要と言われた。

微妙というのは、１４歳までは小児科の扱いだからだ。

病棟も小児科病棟で、回りは幼い子供ばかりだった。

腎炎は少しむくみがでるくらいで、ほとんど自覚症状がない。

早く治して退院したくて、気持ちばかりあせっていた。

友達は皆、夏休みのキャンプに出かける準備をしている頃だろう。

バスケット部に所属していたので、早く部活にも参加したいと思った。

回診に来る先生を「早く退院させろ！」と言わんばかりに、いつもにらみつけていた。

だが、週に２回ある血液検査の数値は一向に下がらない。

長引く入院、病室からはキャンプに行くはずだった恵那山が見える。

一ヶ月もすると、「もうキャンプも終わってしまった頃だろう。あーみんな楽しかっただろうな。」

なぜか、あせる気持ちも落ち着いてきた。

「イライラしても仕方が無い。」だんだんと先生をにらみつける気持ちが薄れてきた。

すると突然、奇跡的に数値が下がった。

あれだけ願っても何をしても下がらなかったのに。

変ったのは気持ちだけだ。

病気をあきらめたというより、受け入れたのが良かったのだと思う。

丸2か月を経て、みごと夏休み最後の日、８月３１日に退院できた。

この経験から、物事を良いように捉え考えるようになった。

結果にもこだわるが、その過程が楽しめればいいじゃないか！と思う。

もちろん、問題が起きない様に色々な布石を打つが、起きてしまった結果にクヨクヨしたりしないようにしている。

全てを前向きに受け入れ対処し、次に進む。

◆人生の転機はいつどんなことでしたか？

１、中２で急性腎炎になった時

２、読売テレビに入社したとき

本や雑誌やマンガが好きで、マンガだけでも３，０００冊くらいは今でも持っている。

文章を書く事も好きだったので、送り手側になりたくて、出版社やテレビ局を受けた。

読売テレビの面接では、マンガは３，０００冊以上ちゃんと読んでいて、そのことが私の武器だと思う。ということを言った覚えがある。

そのお陰か採用され、最初は１１ＰＭという深夜番組を担当していた。

その３年後、マンガ好きと言ったのが残っていたのか、東京に転勤しアニメーション担当に配属された。

読売テレビに入社していなければ、今の自分はない。

人脈も違っていただろう。

余談だが、少なからず偶然にも運命を感じたことがある。

大学生の時、応募してテレビ出演した「ザ・恋ピューター」という桂三枝さんの番組があった。

読売テレビに入社後、社内に貼ってある「ザ・恋ピューター」の番組宣伝用のポスターに、なんと自分が写っているのを見つけた。

何のコネもなく入社した訳だし、たまたま自分が出演した日のシーンがポスターに採用されたというただの偶然。

それにしても、会社も、私が入社して来るなんて想定外だっただろう。

◆問題、障害或いは試練は？どうやって乗り越えたのですか？

１、浪人したとき

丁度、大学入試制度が変わる時だった。

現役受験のときは、国立大学を一期校、二期校に分けて受験する制度がとられていた。

しかし、翌年の１９７９年から「大学共通1次学力試験」という制度にかわってしまった。

どちらも今の「大学入試センター試験」とは違う制度だ。

要領もよくわからないまま、一浪して大阪大学を受験した。

東京の私立大学もいくつか受けたが、いずれも良い結果が得られなかった。

インターネットの無い時代で、受験結果を見るためには、直接一校一校出向いて行かなければならない。

名古屋から東京までわざわざ見に行っているのに、受験番号が無い結果が重なるとさすがに落ち込む。

大阪大学の発表は、半ばあきらめ大阪の友人に見に行ってもらった。

ところがなんと！合格していた。

しかも、手続きが後数時間で終わってしまうという。

机の上も片付ける余裕も無く、そのまま大阪大学に駆けつけた思い出がある。

私の場合、一生懸命がんばった後「フッ」と気を休めたときに良い結果が出るようだ。

２、担当していた番組が終わるとき

やはり寂しい。

番組制作は、スタッフが一丸となって作り上げて行く。

視聴率をそしていろんな成績を高い水準で維持するのは大変なことだ。

そこからは良い人間関係も生まれる。

番組が終われば、いつも一緒にいた仲間ともそれほど会えなくなる。

しかし、「終わる」ということは確かに「あった」という証拠なので、可能な限りつくり上げた人間関係を自分の財産として持続するようにしている。

関係が続くのはやはり相性のいい人だろう。