医療法人社団明徳会
福岡歯科
理事長
福岡博史 氏
2013.12.11 14:00
◆業種
歯科医業
◆子供のころになりたかったものは?
物心がついたときには、自然と歯医者になると思っていました。
父は歯科医師として、既にいくつかの歯科医院を開業していたし、私は、姉と妹に囲まれた唯一の男子だったので、周囲の人々からも跡継ぎと思われていました。
自分としても、歯科医師になることが、この家族に生れた一番幸せな道だと思っていました。
但し、両親からは「歯科医師になって、後を継いでほしい。」と一度も言われた事はありません。
中学時代にロック・バンドを組んで夢中になっていた時も父は、当時一世を風靡していた井上陽水氏も歯科医師の息子なので、「そのぐらいになれるなら歯医者よりよっぽどいいよ。」と言っていた程です。
しかし高校生の頃になって、これはプロになる程ではないなと自覚。
長い髪を「スパッ」と切って受験モードに入りました。
◆毎日欠かさずしていることはありますか?
「祈り」
毎朝、出勤前に祈ります。
父方は違うが、母が熱心なクリスチャンだったので、子供の頃からよく教会にも連れていってもらいました。
子供の頃から、祈ることは極自然なことでした。
大人になる過程で、宗教からは離れていましたが、父の後を継いで暫くしたころから
毎朝祈るようになりました。
医療でも、祈ることの大切さは医学的に証明されています。
特に米国では研究も盛んです。
例えば、患者さんを、一方は医療に祈りを加えたチーム、もう一方は医療行為のみのチームの2つに分けてその効果を検証するという実験も行われています。
これは論文にもなり発表されていますが、有効だという論文、有効でないという論文、結論は様々なようです。
ただ特に終末期の医療については、とても有効だと思います。
もう医学的には施しようのなくなった患者さんに、代替医療の一方法としての「祈ること」で希望を与え、一時的に回復することがあるからです。
それは患者さん側も、信じるという受け入れ態勢が出来ていないと難しいかも知れません。
私の母は、もう亡くなりましたが、生前、キリスト教の専門家に祈って貰うと、本当に体調が良くなりました。
近代医学、西洋医学と東洋医学などの伝統医療、さらにスピリチュアルな医療も合わせて治療することは理想的な医療と考えています。
それは統合医療と言われていています。
当院でも、一般的な歯科医療の他に、統合医療研究所を併設して、様々な代替医療を取り入れて実践しています。
私が行っている「祈り」は自分や家族のためだけではなく、ごく自然に、全ての従業員、全ての患者さんの健康と幸福を願って祈ります。
一日の始まりである朝に祈ることで、今日、人のために何ができるかを考えることができます。
短い時間ですが、朝の充実した時間です。
◆自分の支えになった、或いは変えた人物・本は?
稲盛和夫氏と「盛和塾」を紹介してくれた方
5、6年前に、稲盛和夫氏の盛和塾で講師もしている企業コンサルティングの方が数冊の本を紹介してくれました。
私は、41歳の時、父のつくった医療法人を引き継ぎ理事長職に就きました。
父は求心力の有る人で、従業員が100人近くいた時代もあります。
それまで歯科医師として順調に成長してきた私も、歯科医師をしながら理事長として多くの人をまとめることは難しく、いつの間にか身体が具合悪くなってしまいました。
内緒で精神科に通い薬を常用していたこともあります。
そんな時、そのコンサルティングをしていた方が、「私が理解する稲盛経営について」という小冊子を私にくれました。
そこにあったのは経営のノウハウではなく、私の潜在意識につながる「人間学」で、その小冊子を読んで盛和塾に入りたいと思いました。
それまで盛和塾は大会社の社長さんでないと入れないと思っていましたが、組織をまとめる立場の者なら入塾できるということで、早速入塾のための面接を受けました。
その面接は大学の口頭試問さながらの雰囲気があり、
「あなたは何のためにここに来たのかですか?」とズバズバ質問されました。
経営というのは営利追求のイメージが強かったのですが、小冊子や稲盛塾長の著書を読んだ時、経営は精神的な人間学がベースであり、経営者は心を高めなくてはならないと書いてあり、これは当法人の医療哲学と一緒だからと答えました。
父のやってきたことは歯科医療ですが、その根本にあるものは人間学だとずっと言い続けて来た人です。
歯科医としての技術はもちろん大事だが、人との繋がりを大事にして来たから、父の周りには自然と人が集まりました。
祖父は、歯科医とは全く関係のない日本刺繍家で、技術者でありながらお弟子さんをたくさん抱え、企業として営んでいる人でした。
父の学生時代は戦争中で、いつ召集令状が届くかわからない。
医学生や歯学生は、文系の大学生より召集令状が遅れるという話を聞いた祖母は、親心から父を歯学部に進学させた事が歯科医になった由来だそうです。
そのためか、商人としてのDNAも受け継いだ父は、歯科医療はサービス業だと言い続けてきました。
歯科医業も、昔は開業すれば患者さんが集まるというよき時代がありましたが、今の時代、歯科医師過剰で、大きな組織であればあるほど、その運営は困難になってきました。
それでは組織を運営するのは何のためにするのか?お金儲けのためだったらやりたくありません。
それは、皆が人間性を高め、大きな目標に向かう組織をつくりあげて行くことです。
盛和塾では、それを目指して塾生が皆必死で勉強していました。
また私のような悩み多き2代目経営者の心の拠り所にもなっていました。
組織は、人が多ければ多い程たくさんの意見があり、各々の思うままのことを全て聞いていたら大変なことになります。
基本姿勢を正しくしていないと、ブレてしまいます。
それは「人間学」を学ぶことによって正されます。
盛和塾の小冊子を読んで、人間学の大切さにピンときたのは、父の人との繋がりを大切にする精神と、根底には母のキリスト教的な教えがあったからだと思います。
稲盛氏は過去に、自身のセラミック技術を世に広めたいという気持で始めた会社で、社員に十分な給料を支払う事ができなかった時代に、社員から一生懸命働いているのだから給料もボーナスもこれだけ保障してほしいと詰め寄られたことがありました。
自分は、セラミック技術を世に広めたいと考えて会社をつくったのに、何でこんなことを言われなければならないのか?その思いは社員とは違っていたそうです。
3日間考えに考え抜いて答えを出しました。
そして会社の理念を「全社員の物心両面の幸福を追求する」とし、「今すぐには難しいかも知れないが、これからは、必ず皆さんを幸せにするから。」と宣言したそうです。
この逸話は、盛和塾の塾生は皆知っていることですが、私もとても共感し、当法人の理念にも「全医局員の物心両面の幸福を追求していく」を入れました。
私も歯科医師という技術者であり、歯科医師としての腕を磨き、それを患者さんに供給し、そのために必要な医局員を雇用することが経営と考えていました。
しかし盛和塾に入ることで、人を雇用することの意味がわかり、このような理念を確立することができました。
◆自分の人生を変えたきっかけになった言葉は?
1、「利他の心」
元々は仏教の教えですが、盛和塾にて稲盛塾長が説く言葉です。
人は人のために生きる。お互いに他を思いやり、お客様や社員の幸福を追求する。
この「利他の心」があるからこそ、医療も、世の中も成り立っているのだと思います。
2、「愛は氣なり」
父の言葉
今から約30年前、父は原因不明の病気になりました。
1年以上入院していて西洋医学ではどうにもならない状態だったが、「氣」を習得したら、呼吸法で奇跡的に治ってしまった。
「愛は氣なり」とは、そういった経験から父が実感して良く使っている言葉です。
医療というのは、患者さんへの愛がないと成り立たない。
「愛を注ぐ」という感じです。
それは、患者さんの自然治癒力を高めることにもなります。
これは客観的にも証明されています。
歯科統合医療というのは、「愛は氣なり」をベースにした医療です。
父は歯科統合医療のパイオニアで、私も氣を習い、父の考えを受け継いでいます。
◆人生の転機はいつどんなことでしたか?
大学を卒業する時
大学6年生の卒業時、前述のように、丁度父が大病をしていたときで、進路について病院に通い相談していました。
本来なら、卒業後は大学に残るか、開業医院の勤務医になるかということになりますが、父の回復の目処がつかない時期だったので一日も早く後を継いでほしいということで、すぐに福岡歯科に勤める事になりました。
歯科医としての技術は、父からではなく、当時の勤務医の先生方から教えてもらいました。
大学に残って専門的な研究をしたり、著名な臨床医の元で勤務することできなかったので、たくさんの様々な卒後研修や勉強会に参加しました。
すぐに働いて、自分のお金で自分に投資して学んだことは、その後の大きな財産となりました。
その後、自院での歯科臨床を行いながら、研究生として医学部の教室で研究活動も始めました。
お陰様で、医学博士の学位も取得し、医学部の非常勤講師にもなりました。
この環境に置かれなかったら、今の自分はなかったかも知れません。
◆問題、障害或いは試練は?どうやって乗り越えたのですか?
歯科医師になって数年経ったころ、「医療はサービス業である」という父の考え方を、
「お金儲けのためにやっているんだ」と周囲の同業者に中傷された時。
今でこそ、医療はサービス業だと言う人は多いですが、当時は殆どいませんでした。
父は、何と思っていたかわかりませんが、若かった私は悔しい思いでした。
だからこそ、歯科医師としての学問・技術を物凄く追求し、勉強しました。
そんな学者タイプの人間だったので、理事長職を引き継いでから、悩みに悩みました。
学問・技術を追求するだけでは、歯科医院経営はできないからです。
父は創業者なので、組織と共に成長してきました。
創業者の苦しみと2代目の苦しみは違うので、父にも相談してもどうにもなりません。
「朝起きてそのまま逝っていたら、どんなに楽か。」と思ったこともありました。
眠れないので、抗精神薬に頼ることしかできなかった時期もあります。
2代目の苦労知らずが、いきなり理事長職についたギャップに苦しみ、もがきにもがいて前述の盛和塾に出会うことができました。
歯科医師として技術的な壁を乗り越える人は多いと思いますが、歯科医師として経営者として、両方の壁を乗り越えて行く人は少ないと思います。
悩みを共感してくれる人がいない中、うつ病になるくらい悩み抜いたとき、天から何かが降ってくるように思います。
それに気がついて、掴んだものは大きいと思います。
盛和塾には、耳を塞ぎたくなるくらいどん底の経験をした経営者がたくさんいます。
その経験談を聞いた時に、どんなに悩んでいても、私はまだまだひよこだと思えます。
そしてパワーをいただきます。
そのためか塾生には、2代目3代目が多いようです。
◆夢は?
統合医療を歯科医療業界に訴えていき、世に全人的な歯科医療を普及させる。
それと共に医療法人を充実させていく。
医局員一人ひとりがHAPPYな人生を送れるように!
60年続いている福岡歯科の伝統を守りながら、組織として、歯科医院として成長していきたい。
歯科医療だけでなく様々な医療を取り入れて、総合的な治療ができる統合医療のモデルクリニックをつくりたい。
そんなことを実現して、その時は本当のヒーローになりたいと思います。
福岡歯科
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小野澤 亮介 (水曜日, 22 8月 2018 11:43)
千代田区に住む会社員です。
福岡歯科様を知人より紹介頂き
近く治療でお伺い致します。
ブログ拝読しました。
サ―ビス業という視点と利他の心を忘れない点に共感しました。今まで歯の治療をないがしろにして参りましたのでどのようなアドバイスを頂けるのか楽しみです。どうぞよろしくお願いいたします。