一般財団法人 電力中央研究所
研究参事 博士
新藤 孝敏氏
2012.11.6 15:00
◆業種
高電圧工学博士(雷博士)
◆子供のころになりたかったものは?
1、電気関係の仕事
父が町の電気屋さんだったので「電気関係の仕事につくのだろうな」と漠然と思っていた。
両親は忙しく、どちらかというと放任主義で、電気関係の仕事についてほしいと言われたこともない。
しかし、父がテレビなどを修理する姿をいつもみていたので、影響を受けたのだろう。
昔のブラウン管テレビは、多少の修理が自宅でできたが、今のプラズマテレビは基盤を取り替えるだけなので本当の意味での修理は難しい。
あの時代ならではの光景だ。
2、法医学博士
子供の頃、外でもよく遊んだが本が大好きだった。
特にミステリー小説が好きでよく読んでいた。
親戚に医者が多かったが、医学関係ならば検死官なら面白いのではないかと思っていた。
◆毎日欠かさずしていることはありますか?
活字を読むこと
本や雑誌、新聞など、必ず活字を読んでいる。
しかし、実は読むようにしているのではなく、ほとんど活字中毒だと思う。
子供の頃から、ジャンルを問わずいつも読んでいた。
思えば母も本好きだったという。
母が本を読んでいる姿を見た覚えはないが、血統なのだろうか。
◆自分の支えになった、或いは変えた人物・本は?
両親
忙しい両親で、放任主義とは言え見守りながら育ててくれた。
自分の好きなことをさせてくれたお陰で、じっくり本を読むこともできた。
その“じっくり“体質が研究者に向いている。
研究は根気がいるものだ。
しかし研究者は、それを苦痛に思っている人はいないだろう。
そう思ったら続かない。
雷の研究にしても、雷が起きるまで待たなければならない。
それでも、次にはどんな新しい発見、現象が起きるのかと毎日楽しみにしている。
そんな毎日が送れるのも、両親のお陰と感謝している。
◆自分の人生を変えたきっかけになった言葉は?
「人間(じんかん)いたるところ青山(せいざん)あり」
青山とは墓地のこと。
色々な解釈があるが、「人の死に場所は何処にでもあるのだから、故郷にとどまらず広く世間に出て活躍すべき。」というのが本当らしい。
何をやっていてもいつ死ぬかは分からないのだから、やるべきことをやって死ねればそれで満足だ。
決して開き直る訳ではないが、出来ることは出来るし、出来ないことはできない。
やるべきことをやれば、後は運命に任せる。
◆人生の転機はいつどんなことでしたか?
雷の研究に出会ったとき
電力中央研究所に入って、5、6年たった頃、経験豊富で紳士的な上司から「雷の研究をやってみたら」と言われた。
当時は(今もそうだが)、雷は研究の余地がまだまだ多くある分野であるというのが、その理由である。
更にその上司が、フロリダ大学への留学も進めてくれた。
フロリダ大学には、雷の研究で世界的に有名な先生がいたからだ。
一年間留学することにした。
そこで学んだことも大きかったが、何より多くの友人をつくることができた。
世界中からやって来た仲間が、今はそれぞれの国に戻って雷の第一人者になっている。
国際会議などで再会すると、「ヤァヤァ」と若いときにタイムスリップしたかのようになる。
今からでも人とは仲良くなれるが、若いときに知り合った人ほどフランクに付き合える。
こういった関係は、研究や会議をスムーズに進行させるのに役立つ。
人の和、繋がりの大切さを感じている。
また、雷に出会う前に高電圧工学に出会ったことも重要だ。
高電圧工学の研究をしていなかったら、雷の研究を勧められることも無かっただろう。
高電圧工学と出会ったのは、東京大学工学部電気工学科の学生時代。
どこの研究室に入ろうか考えていたとき、高電圧工学の先生は囲碁が強いという評判を聞いていた。
囲碁が趣味だった私は、即座に高電圧工学の研究室に入った。
結局この先生と研究室では一度も対局できなかったが、きっかけはどうであれ運命の出会いだったと言える。
更に、電力中央研究所が大学院の先生を通して、私にぜひ来てほしいと声をかけてくれた。
この出会いもなかったら、雷との出会いもないことになる。
これも運命ということになるのだろうか。
全てを通じて、私は運が良いと感謝している。
◆問題、障害或いは試練は?どうやって乗り越えたのですか?
数年前に心臓病を患った。
発作が起きたのは、幸い休みの日だった。
私は、運のよい人間だと思う。
もし、重要な会議の最中だったら、苦しくても相当我慢してしまっただろう。
心筋梗塞だったので、我慢しただけ心筋が死んでしまう。
心筋梗塞に限って我慢は厳禁だ!
手術をするのに一刻を争う。
休みだったお陰で、すぐに病院に行って手術を受けられたので助かった。
その入院中に、色んなことを考えた。
「何をやっていてもいつ死ぬかわからない。」に通ずるが、病が急なことだけに当然ながら仕事も中断することになる。
どんなに一生懸命やって来たことだろうとお構いなしだ。
あがいてもどうにもならない。
しばらくして仕事に復帰したとき、ものは考えようで、大病すると自分でも少しは体を気遣うようになったし、何より周りの人間があまり無理なことを言わなくなった。
良しとすれば良いことになると考えるようになった。
◆夢は?
新しい、面白いデータを発見したい!
今、東京大学と電力中央研究所と東京スカイツリーの運営会社とで、東京スカイツリーに雷電流の観測装置をつけて観測をしている。
雷の研究は、各家庭に電気を送るための電力設備を守るために、大変重要な研究だ。
展望回廊の上、地上497mのところで観測をするのは世界でもあまり例がない。
今までにない現象が発見できることを楽しみにしている。
また、「ずっと何かやることがあるといいな。」とも思っている。
妻と旅行をするのも良いし、晴耕雨読(※せいこううどく:晴れた日には田畑を耕し、雨の日には家にこもって読書をすること。)の生活も良さそうだと思うが、できれば生涯現役に近い状態でいたいと思っている。
一般社団法人 電力中央研究所
雷のふしぎ (冊子)
http://criepi.denken.or.jp/research/pamphlet/light.pdf
研究紹介映像(雷)
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