独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
宇宙飛行士
金井 宣茂氏
2012.10.11 13:30
金井宇宙飛行士
国際宇宙ステーションへの長期滞在決定
おめでとうございます!
◆業種
JAXA宇宙飛行士
◆子供のころになりたかったものは?
医師
もしくは病院で働く人
加えて、海外で仕事をすることに興味がありました。
船医として半年間、水産庁の調査船に船医として乗った体験を基にした北杜夫の著作である「どくとるマンボウ航海記」が面白く、よく読んでいた。
また国境なき医師団の活動にも興味をもっていて、他に、SFの父とも呼ばれるジュール・ヴェルヌの作品や三銃士、宝島などの冒険物にも多く影響を受けた。
本が大好きになったのは、幼い頃から両親がよく本を買ってくれたためと思う。
ただ買い与えるだけでなく、一緒に買いに行って、寝る前に読み聞かせをしてくれた。
特に日本昔ばなしや世界名作劇場や歴史物などが大好きだった。
普段は忙しい両親だったので、本を読んでもらうときは、親子触れ合いのひと時。
至福のひと時だ。
気が付いた時は本が大好きになっていて、テストで良い点を取ったとき等のご褒美は本だった。
本を買ってもらえることが物凄く嬉しかった。
多くの様々な本からも影響を受けて、益々医師になって海外で働きたいと思うようになった。
大学進学を考えていた頃、国際連合カンボジア暫定統治機構(1992年から93年)、略称UNTAC(アンタック)が設立されたところで、平和維持活動(PKO)として自衛隊の海外派遣がニュースになっていた。
日本の政府として、国際貢献の仕方が話題になっていた頃だ。
そのニュースを見たとき「コレだ!」と思った。
自分の思っていたものにピッタリだ!
人道的な手伝いが出来る!自衛隊の医師になってPKOに参加しよう!
そう思って防衛医科大学に進学し、自衛隊で外科医になった。
しかし心のどこかで、宇宙飛行士にも憧れていた。
◆毎日欠かさずしていることはありますか?
居合を抜く
防衛医科大学を卒業後、自衛隊に入隊してから居合道を始めた。
自宅で30分くらい、毎日するようになったのは2年程前から。
とても集中でき、精神統一に役立っている。
◆自分の支えになった、或いは変えた人物・本は?
祖母。
両親が共働きだったので、よく面倒を見てもらった。
とにかく褒めてくれた。
孫の中で一番かわいがってもらったのではないかと思う程だ。
字を書けば、「字が大きくていいねぇ、心の大きな人になるよ。」というように、些細なことでも必ず褒めてくれた。
祖母の影響は大きく、お陰で、物凄く自信がついた。
また、多くのことを教えてくれた。
その中で、非常に良い経験が出来たと思うことがある。
いつも褒めてくれる祖母に、一度だけ怒られたことだ。
幼稚園の頃で、原因はハッキリと覚えていないが、人様に対する礼儀がなっていないとか挨拶や言葉使いが悪かったことのように思う。
このとき、幼いながら社会には守るべき秩序や礼節があり、それをわきまえなければ世の中で認めてもらえないのだと思った。
とても感謝している。
◆自分の人生を変えたきっかけになった言葉は?
「一歩踏み出してみよう!」
居合の手ほどきをしてくれた先輩から教わった言葉。
更に続けて「いつかやるというが、いつかという日は来ないんだよ。」と教えてくれた。
JAXA宇宙飛行士の募集広告を新聞で見たときも、この言葉を思い出し「よし!受けてみるか!」とチャレンシすることが出来た。
自ら一歩踏み出したからこそ今がある。
一歩踏み出すことの大切さを実感している。
◆人生の転機はいつどんなことでしたか?
JAXAに入社したときと思うが、これは前の仕事があってこそ次の結果であり、1つの段階を経たという感覚だ。
人生は一連の流れとなって全て繋がっている。
今の自分があるのは、自衛隊の頃の自分があり外科医の経験があるからこそ。
またそれも、幼少の頃からの経験があってこそ成り立っている。
どれも欠くことが出来ない。
ご縁と経験が、次の自分を導いてくれたのだと思っている
◆宇宙飛行士の訓練が厳しいと言われますが、一番大変だった訓練は何ですか?
また、どうやって乗り越えたのですか?
全てがチャレンジだった。
エンジニアの仕事が多く、それまでしていた医師の仕事とは全く違う世界だ。
人間相手だったのがロボット相手に変わり、ロボットアームの操縦も、飛行訓練も全く経験がないことの連続だった。
見かけも、メスがレンチに、白衣がブルースーツ(宇宙飛行士の飛行訓練服がブルーのつなぎ服なのでそう呼ばれている)に変わった。
他にもカメラ操作など、バラエティ豊かで色々な訓練がある。
中でも、無重力の中で作業する訓練のため、潜水用に作り変えた模擬宇宙服を着てプールに入り、水中でISS(国際宇宙ステーション)の修理や壁を伝い歩きする訓練が大変だった。
潜水用の模擬宇宙服は空気でパンパンに膨らませてあるので、とにかく浮いてしまい身動きが大変なのだ。
また訓練では、ダメなものはダメとシビアに判定が下される。
当たり前だが、試験も容赦なく落とされるので結構へこむことが多い。
そんなとき、宇宙飛行士の先輩たちから「ハッピークルー!」と声をかけられた。
楽しまないと!
学ぶことの原点は、楽しいと思っている。
子供の頃から、両親や祖母が学ぶことの楽しさを、生活を通して自然に根付かせてくれた。
楽しまなければ損だよね。
そう思い、訓練も楽しむようにしている。
◆夢は?
50年後に、海外旅行に行くように宇宙旅行が出来る世の中にしたい!
宇宙に出るだけなら8分で出られるが、国際宇宙ステーションまでは現状2日間かかる。
今でも、ある程度の訓練をして、膨大なお金をかければ国際宇宙ステーションまで行かれるが、狭い部屋の中で2日間耐えるのはかなり大変だ。
飛行時間を数時間に出来れば、飛行機で海外旅行に行く感覚で宇宙に遊びに行かれるようになるだろう。
イメージとしては、一緒に宇宙飛行士に認定された、パイロット出身の油井さんと大西さんが宇宙船を操縦して、医師出身の自分が船医としてチームを組み、日の丸を掲げ、皆さんを宇宙までお連れしたいと考えている。
皆さんと宇宙の架け橋になれるように!
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